「アイドル」とはなにか?


アイドルといえば、1985年前後までは、それそのままポップスターとほぼ同義語でした。たとえ歌唱面が未熟であったとしても、才能豊かな楽曲提供者や気鋭の映像作家たちが彼女たちを大きくサポートしました。思えば日本の歌謡曲・ポップス・ロック・フォークなどの土台を作ってきた人たちが、新たなポップカルチャーを「アイドル」というものに見出していたのはまず、間違いないでしょう。彼女らは歌だけでなく、映画やテレビのバラティ番組(このころは単純に「お笑い番組」と呼ばれていた)でコントを披露することもしばしば。現在でもアイドルはそれと似たようなことをしていますが、あくまでもその頃のアイドルは「アイドル≒未成熟なポップスター」というわかりやすい存在でした。
ところが、時代が進むにつれてアイドルも多様化し、80年代後半から90年代前後になると、別に大した歌を歌わなくても、手に届かない憧れのスターでなくても、近所に住む女の子でも、ちょっとかわいらしいところがあれば芸能界でアイドルができるという時代になります。ここで、「アイドル≒未成熟なポップスター」という全国的な共通意識は崩壊します。90年代以降は、グラビアアイドルが台頭するのもこのころで、アイドルのヘアヌード写真集が話題になるのもここからです。*1
アイドルは、わかりやすい「アイドル像」を鑑賞するものから、いち人物の個性や行動、すなわちその人物の「アイドル性」を愛でるものとなります。*2
今や「アイドル」は見る側それぞれのイメージの中のものであり、「これ」といった像はなく、ただの概念でしかないといえます。そういう意味では、老若男女・貴賎都鄙を問わず、だれでもアイドルになる(または「なれる」)時代といえます。

*1:1989年、おにゃん子クラブ結成。をきっかけとしたアイドル氷河期時代

*2:思えば球界では長嶋茂雄、プロレス界ではジャイアント馬場、芸術家の岡本太郎もアイドル的存在。現在で言うなら、戦場カメラマンの渡辺陽一か。